
ミルトン・エリクソンの魔法と呼ばれた心理療法を探求し体系化を試みたアーネスト・ロッシ。
そして、独自の理論も展開したロッシ。
彼の功績のおかげで、私たちはミルトン・エリクソンの叡智を、在り方を伺い知ることができます。
ここでは、アーネスト・ロッシについて紹介します。
生年月日: 1933年3月26日 没年月日: 2020年9月19日
出身地: アメリカ合衆国コネチカット州シェルトン
専門分野: 臨床心理学、精神生物学、催眠療法
ロッシは、若かりし頃にエリクソンと出会い、その革新的な治療法に魅了されました。
エリクソンの自宅を訪れては、治療の様子を直接観察し、個人的な指導を受ける中で、二人の間には、師弟関係を超えた深い友情が育まれていきました。
ロッシは、エリクソンの治療法を体系化し、後世に伝えるために尽力しました。
彼らは共同で研究を行い、数々の論文や書籍を執筆しました。
中でも、エリクソンの治療場面を詳細に記録した 「催眠による治療 (言行録第1巻) (ミルトン・エリクソン言行録 第1巻)」 は、エリクソンの技法を学ぶ上で必読の書となっています。
ロッシは、エリクソンの後継者として、彼の業績を継承するだけでなく、独自の理論を展開し、心理療法の発展に貢献しました。ここでは、その独自理論に迫ります。
ロッシは、人間の心身に約90〜120分周期で繰り返される「超日周期リズム」が存在することを発見し、このリズムを利用することで、心身の健康や自己治癒力を高めることができると提唱しました。
私たちの思考、感情、行動が遺伝子の働きに影響を与え、心身の健康状態を変化させるという「遺伝子発現」の概念を心理療法に導入しました。
癌などの慢性疾患に対する心理療法の有効性を研究し、心身の相互作用に着目した治療法を開発しました。
ロッシは、エリクソンから、心理療法の技術だけでなく、ユーモアと洞察力も受け継ぎました。
例えば、ロッシがエリクソンの自宅を訪れた際に、エリクソンは庭から拾ってきた石を「幸運をもたらす特別な石」と偽り、ロッシにプレゼントしたというエピソードがあります。 後日、ロッシがエリクソンの妻にこの石について尋ねると、彼女は笑いながら「ミルトンったら、あなたをからかったのよ」と答えたそうです。
このようなユーモアあふれるエピソードからも、エリクソンの人間性と、ロッシとの親密な関係が垣間見えます。
エリクソンは、晩年、ポリオの後遺症で体の自由がきかなくなりました。
しかし、彼はそれでもなお、精力的に活動を続け、多くのセラピストを指導しました。
ロッシは、エリクソンの献身的な姿に深く感銘を受け、彼を支え続けました。
エリクソンは、ロッシのことを「私の息子」と呼ぶほど、信頼を寄せていました。
二人の友情は、エリクソンが亡くなるまで続きました。
ロッシは、エリクソンの死後も、彼の業績を世界に広めるために尽力しました。
これまでミルトン・エリクソンの後継者であるアーネスト・ロッシについて、その生涯と業績、そしてエリクソンとの関係性についてお伝えしました。
ここでは、ロッシの著書の中でも、日本語に翻訳されているものに焦点を当て、より詳しくご紹介したいと思います。
これらの本を読むことで、エリクソンの思想や技法をより深く理解し、ひいてはあなた自身の潜在能力を引き出すヒントにも繋がるかもしれません。
著者:ミルトン・H・エリクソン、アーネスト・L・ロッシ
翻訳:石川元、金子建、丹野義彦
出版社:日本教文社
ロッシは、エリクソンの治療場面を詳細に記録した「エリクソン言行録」シリーズを編集しました。このシリーズは、エリクソンの催眠療法を学ぶ上で必読の書と言えるでしょう。そのシリーズの第1巻です。
著者:ミルトン・H・エリクソン、アーネスト・L・ロッシ
翻訳:石川元、金子建、丹野義彦
出版社:日本教文社
エリクソンがどのようにクライアントの「人生の物語」を再構成し、問題解決へと導いたのかを解説しています。
著者:ミルトン・H・エリクソン、アーネスト・L・ロッシ
翻訳:石川元、金子建、丹野義彦
出版社:日本教文社
エリクソンが、クライアントの潜在意識にどのように働きかけていたのかを、具体的な事例を通して解説しています。
著者:ミルトン・H・エリクソン、アーネスト・L・ロッシ
翻訳:金子建
出版社:日本教文社
エリクソンとロッシの共著で、エリクソンの催眠療法のエッセンスを凝縮した一冊です。
催眠の基礎知識から、応用テクニックまで、幅広く解説されています。
著者:ミルトン・H・エリクソン(アーネスト・ロッシが対話式で解説)
翻訳:井村恒郎
出版社:誠信書房
エリクソンが1945年に行った有名なデモンストレーションケースを記録したものです。
戦争神経症の兵士と、水を怖がる女性、2つのケースを通して、エリクソンの治療法のエッセンスを学ぶことができます。
ちなみに、「2月の男」のタイトルの由来は、 水を怖がる女性が催眠の中で出会う男性が「2月にやってくる」 という設定からきています。
エリクソンはこの女性に対して、催眠療法の中で、彼女が潜在意識の中で作り出した「2月の男」(エリクソン)と出会うように促しました。そして、この「2月の男」との対話を通して、彼女は自身の恐怖心と向き合い、克服していくことになります。
ロッシは共同編集者として、各セッション後に詳細な解説を加え、エリクソンの技法の意図や効果を分析しています。
現代社会におけるストレスの増加を背景に、ロッシは「20分の休憩」の重要性を説いています。
超日周期リズムに基づいた休息法を紹介し、心身の健康を維持するための実践的な方法を提案しています。
残念ながら、現在のところ和訳は出版されていません。
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ロッシが提唱する「ヒプノシンセシス」は、催眠と自己暗示を組み合わせた、新しい心理療法です。
ヒプノシンセシスの理論と実践方法について詳しく解説しています。
こちらも、現在のところ和訳は出版されていません。
アーネスト・ロッシは、ミルトン・エリクソンの思想を受け継ぎ、独自の理論を展開することで、心理療法の世界に新たな地平を切り開きました。 彼の研究は、潜在意識の力、心と体の繋がり、そして人間が本来持つ自己治癒力への理解を深める上で、重要な貢献をしています。
ミルトン・エリクソンに興味がある方は、ぜひ、アーネスト・ロッシの世界にも触れてみてください。きっと、新たな発見があるはずです。
* アーネスト・ロッシ著, 「催眠による治療 (言行録第1巻) (ミルトン・エリクソン言行録 第1巻)」, 日本教文社
ミルトン・H・エリクソン財団
[https://www.erickson-foundation.org/]
日本教文社
[https://www.kyobundo.co.jp/](https://www.google.com/url?sa=E&source=gmail&q=https://www.kyobundo.co.jp/)
チーム医療ラーニング
[https://teamiryo.com/](https://www.google.com/url?sa=E&source=gmail&q=https://teamiryo.com/)
この記事が、あなたの心理療法への理解を深める一助となれば幸いです。