ミルトン・エリクソンの催眠の現実ー臨床催眠と間接暗示の手引き

ミルトン・エリクソンの催眠の現実ー臨床催眠と間接暗示の手引き

ミルトン・エリクソンの催眠技法:現代催眠療法の父から学ぶ

『ミルトン・エリクソンの催眠の現実―臨床催眠と間接暗示の手引き』
著者: ミルトン・H・エリクソン、アーネスト・L・ロッシ、シーラ・I・ロッシ
訳者: 横井勝美
出版社・出版年度
出版社: 誠信書房
出版年度: 1987年(日本語訳)

 

『ミルトン・エリクソンの催眠の現実―臨床催眠と間接暗示の手引き』は、現代催眠療法の父とも称されるミルトン・エリクソン博士の臨床催眠技法を体系的にまとめた書籍です。

 

本書は、エリクソンの画期的なアプローチを学びたいと考える心理療法士やカウンセラーにとって、貴重な学習資料となっています。

 

エリクソンは、伝統的な催眠療法が「直接的な暗示」を使用するのに対し、より柔軟かつ自然な「間接暗示」を重視しました。

 

このアプローチは、患者の無意識に働きかけ、その人自身の資源や強みを引き出すことを目的としています。これにより、患者が自分自身の力で変化を起こすことができるという考え方が根底にあります。

 

書籍の中では、まずエリクソンが用いた間接暗示の技法が詳しく説明されています。

 

本書で紹介される「ユーティライゼーション」「自明の理」「リカピュテーション」「イエスセット」といった技法を駆使しながらもエリクソンの方法論は、ただ言葉を使うだけではなく、ジェスチャーや声のトーン、表情といったコミュニケーション全体を駆使して暗示を伝えるものです。

 

これにより、患者は「自分が指示を受けている」とは感じず、自然な形で無意識の働きにアクセスしやすくなるとされています。

 

特に従来の直接的な暗示に抵抗があるクライアントや、防衛機制が強いクライアントに対して効果的、と紹介されています。

 

また、本書では臨床催眠におけるエリクソンの革新的なアイデアが、多くの実例を通じて紹介されています。

 

エリクソンの患者とのやりとりを再現し、彼がどのようにして患者の無意識を探り、その人特有の問題に対処していったかが描かれています。

 

特に、エリクソンは一律の技法ではなく、個々の患者の特性に合わせたオーダーメイドの治療法を重視していました。

 

そのため、彼の催眠療法は非常に柔軟で、状況に応じた独自のアプローチを取ることが特徴です。

 

さらに、共著者であるアーネスト・ロッシとシーラ・ロッシも、エリクソンの理論を発展させる形で臨床催眠の実践的な手引きを提供しています。

 

ロッシ夫妻は、エリクソンの催眠療法がどのようにしてクライアントの無意識に働きかけ、変容を促すのかを体系化し、その応用方法を紹介しています。

 

特にアーネスト・ロッシは、エリクソンの催眠理論を深く研究し、神経科学や心理学の最新の知見を交えて催眠の効果を説明しているため、読者は理論的な裏付けとともに実践的な技術を学ぶことができます。

 

催眠は、単に人を「眠らせる」ものという誤解があるかもしれませんが、エリクソンの催眠療法はクライアントの自己探求を促し、自己変革を引き起こす力を持っています。

 

特に、トラウマ治療や不安障害、依存症の克服といった分野において、エリクソンのアプローチは現代でも有効であると評価されています。

 

この書籍は、エリクソンの技法を学びたいと考える専門家だけでなく、個人の成長や自己探求に興味を持つ一般の読者にとっても有益です。

 

エリクソンの手法は、日常生活のコミュニケーションや自己改善のためのツールとしても応用可能であり、その幅広い応用範囲が紹介されています。

 

エリクソンの催眠療法を理解することで、読者は無意識の力を引き出し、変化を引き起こす手助けをする手法を学ぶことができるでしょう​。

 

『ミルトン・エリクソンの催眠の現実』は、エリクソンの催眠技法を通じて心理療法やパーソナルな成長に関心のある方々にとって、価値ある一冊です。